最新の香港の労働情勢と雇用条例
総人口:739万4700人
人口増減:-1.2% (Mid-year 2021)
総労働人口:384万8400人
失業率:5.0%
不完全雇用率(就業不足率):2.4% (1)(2)
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注釈:不完全雇用率(就業不足率 / underemployment rate)とは、公表する失業率自体を統計上低く見せる為のカテゴリーというのが香港の官僚の本音である。つまり、コロナ禍で増大した就業状態とは名ばかりの実質失業者、停職者、短時間労働者及び求職者などが、公式の失業者とは別個に統計上包括される概念である。しかも、日本語の求人倍率などとは全く根本的に違う経済概念である。
これには、集計前7日間の非自発的な労働時間が35時間未満で、集計前30日間に追加の仕事を求めた被雇用者、または追加の仕事を求めなくても集計前7日間に追加の仕事をすることができた被雇用者が含まれる。 この定義によると、集計前の7日間に、仕事量が足りないために無給休暇を取った被雇用者も、労働時間が35時間未満、あるいは7日間にすべての休暇を取った場合は、不完全雇用者と定義される。(3)
政策上の変化或いは特色:
新冠肺炎疫情下,多國的疫情不穩,旅遊業及航空業成為失業重災區。香港空運貨站職工會主席葉以勒指出,客運方面深受打擊,不少人被裁或放無薪假,但貨運方面卻出現「有工冇人做」的怪現象。葉相信機場偏遠及聘用條件低成為「怪現象」的成因。
工聯會職訓就業委副主任梁子穎表示,「有工冇人做 ,有人冇工做」情況正正反映就業錯配問題,並指去年起至今在「防疫抗疫基金」預留共132 億元推行兩輪創造職位計劃,於公營及私營機構創造約60,000個有時限職位。截至本年七月,只有29,000個職位成功配對,有近一半職位未能成功配對。梁認為成功配對數字偏低顯示計劃細節存在問題。
工聯會建議政府應「以工代賑」,參考沙士時期所開創的職位,額外開設15,000個新職位,包括護理、小型維修,以及清潔與滅蟲等職位予失業人士,並加快兩輪合共60,000 萬個臨時職位的落實進度。團體又要求政府提高再培訓津貼至9,000元,並且取消免學費、領津培訓的「特別‧愛增值」計劃的課程的報讀限額,解失業人士燃眉之急。(4)
日本語翻訳:
新型肺炎の流行により、多くの国で観光産業や航空産業が大きな被害を受けている。 香港エアカーゴターミナル労働組合のイップ・イーロク会長は、旅客側では多くの人が解雇されたり、無給休暇になったりと大打撃を受けているのに対し、貨物側では「仕事があるのに、求職者がいない」という奇妙な現象が起きているという。 イップ氏は、空港の遠さと雇用条件の低さが「奇妙な現象」の原因だと考えている。
香港労働組合総連合会(FTU)職業訓練・雇用委員会副主任のレオン・チーウィン氏は、「仕事があるのに人が雇われていない」という状況は、雇用のミスマッチを反映しているとした上で、昨年来、疾病予防管理基金の下で2回にわたる雇用創出プロジェクトに総額132億香港ドルが計上され、官民で約6万人の期限付き雇用が創出されたと述べた。 今年7月時点でマッチングに成功したのは2万9,000件にとどまり、半数近くが未マッチングとなっている。 レオン氏は、成功したマッチングの数が少ないのは、プログラムの詳細に問題があったことを示していると述べた。
FTUは、SARS期間中に創出された雇用に鑑み、政府は失業者のための看護、小規模なメンテナンス、清掃、害虫駆除など1万5,000件の新規雇用を創出し、合計6,000万件の2回にわたる臨時雇用の実施を早めるべきだと提案した。 また、失業者の切迫したニーズに対応するため、再教育手当を9,000ドルに引き上げ、特別訓練・強化プログラムによる授業料無料の補助付き訓練コースの登録制限を撤廃するよう政府に要請した。
ここでは、中国大陸には言及しないが、最近の香港の労働環境の特異性を示す概括性を有した重要なニュースが以上に引用した東方日報の8月30日のニュースである。現在の香港の労働環境及び労働官僚、労働組織(労働貴族)の典型的な単線、短線(目先)思考、そして政策に関する思想がここに凝縮されているのに気付かされる。
まず、香港の労働官僚の側はとにかく目先の失業率を統計上下げるだけの為に、短期の肉体労働、ブルーカラーの臨時職を大量募集しているが、求人者が半数にも満たないのはまずは、労働条件が何よりも劣悪だからである。就業率と求人倍率とを人口統計上水増しするために、明らかに労働者の側に安定した、長期的に購買力(生活能力)も堅実に維持できる様な、まともな職の創出とマッチングを試みるという考えはなく、彼らがその初めから劣悪な肉体労働の臨時職を大量に用意するという点に、既に明確なネオリベの冷酷な価値観と発想が看取される。そもそも労働者の生活の安定、最低限の文化的な生活云々の万国共通の政策基本理念や想定がない香港の労働官僚の非人間性が露骨に顕在化している。
さらにここで言う、臨時職は日本の様な役所の嘱託職の様な直接雇用よりも劣悪で、実際は外部委託業者の下での請負労働である。これが、直接雇用であるかのような体裁下で、説明もなしに香港の現地労働者達、主として非外国人労働者達に対して提示されている。大量雇用とは、ネオリベ社会では大量離職を前提にした時限性のものであり、場渡的で、統計上の操作の一環にすぎない。そして、大量雇用であるからには、大量であればあるほど劣悪な労働条件と言う条件付きでもあるのがネオリベの特徴である。そもそも、その最初から最後まで、労働者側の生活状態の抜本的な改善という長期的な視野における措置ではない。
これでは、コロナ禍ですら労働者達が半数以上の求人に応募すらしないのは至極当然である。むしろ、労働条件改善の社会的な圧力を構成するには労働者の側からの社会的なボイコットが必要である。労働者を労働市場において求職へ駆り立てる内的な衝動はそれ自体自然の産物ではなく、生存権を脅かす資本主義の暴力的な心理作用であり、労働力をとにかくどこかの資本家へ売ることを強制する外的機制である。これが、労働者の側にうつ病や精神異常をきたす主要な社会的な要因である。
香港の労働官僚(どこの資本主義社会も同様だが)は、この労働力を売る労働者の側の逼迫した労働市場参加への衝動を創出するために社会福祉を人工的に著しく低い水準に置く傾向がある。しかも平然とその魂胆を公言する。あえて何も手を打たないのは、自動的にはこうした労働者の側の逼迫状況を作り、資本の側でとにかく労働力を買い叩く状況をもたらすネオリベの魂胆である。この点で、労働官僚が誰に奉仕しているのかは明確である。
その証拠には、香港の官僚は大規模公共事業と公営企業を戦略的に特定業界において設置して、安定した職を多く創出しようとはしない。臨時職の請負労働者を委託業者の下で大量に創出して場渡的に統計上失業率を下げることしか考えていない。つまり、自分たちの当年の業務成績しか考えていないから、労働者の側の生活を改善する抜本策というそもそも本来の政策の観点が驚愕するべきほどに欠落している。一体どう言う類の公務員、政府なのだろうか?
では、労働貴族の方はどうかと言うと、再教育手当や訓練コースは彼らが私営で運営する補習機関への補助金の流入のことであり、そもそも彼らの補習・訓練機関なるものが企業からは要求されない類の有用性のない証書や資格の取得期間に、受講者側が雀の涙程に享受する金額に過ぎない。これ自体も場渡的で労働官僚と同様の目先だけの短線思考である。
全体としては、むしろこうした労働官僚や労働貴族の欺瞞と利己主義を見据えて、敢えて劣悪な労働条件に応募せず、社会的にボイコットする事で労働条件上昇の社会的圧力を醸成したり(個別の泣き寝入りは敗北であり、より社会的なレベルでの労働条件全体を悪化させる)、果ては移民するという目下の二大傾向に香港の労働者階級の悲哀と、知性、自覚と度量が如実に顕在化されている。これらの沈黙の抵抗は、当面肯定的な積極的現象と捉えるのが労働者側である。
香港では、新労働運動という新概念が今年3月に提唱されたが、以下は重要な補充である。
労働者階級を餌食にする基本的な単位は、何よりも資本家(地主や暴力団も含む)、労働官僚、労働貴族、そして最も労働組合、労働組織に疎かにされがちな相手である金融機関である。
留意するべきは、これらは全て資本家。官僚に関しては、香港において2002年から香港政治委任制度(a ministerial system)を導入し、委任された民選ではない資本家あるいはその利益代表が公務員の団体を率いるというネオリベ制度(政府国家の株式会社化、公的サービスの私有化の手段)が既に存在している。
公的サービス、公営企業の効率性云々の詭弁は、それ自体生存権を確保するために、社会的インフラを整備し、資本家が顧みない住民の生活水準確保、維持と向上を主眼に置くものであるという本質的差異を意図的に無視している。であるからして、私的利潤の追求という私営企業として公的サービスや公営企業を計るのは根本的に筋違いで、公的サービスを私有化して競争のない独占体を一気に形成しようという私利私欲の妄言に過ぎない。しかも、そうした資本家が公的サービスを指導する結果、香港の生活水準は貧困率とともに悪化の一途を辿っている。コロナ禍どころか虫害、鼠害(そがい)すらろくに解決できない有様である。彼らの目的が、問題の解決ではなく、公的資金の安定した私物化に過ぎない事は数値が全て物語り、明白である。
従って、直接/間接の形態で官僚資本、官僚資本家、官僚資本主義と言うのも存在しており、公務員、官僚には資本家はなれないし、兼任はなおさらできないという観念は現実を知らない時代遅れの認識か、事実を隠蔽する体制の走狗番犬の詭弁である。それから、労働貴族は、議員であり自身の事務所(会社)や小規模な不動産会社を経営していたり、彼ら自身はもちろん労働者ではなく、プチブル層である。
最重要なのは、香港の寡占/独占体は不動産業界としての側面がいたずらに強調されるが実態は金融業である。なぜなら単に土木工事自体が目的ではなく、不動産や株の投機と市場の機能との甚だしい乖離が主点だからである。そして、彼ら大財閥自体も自身の金融機関を有している。
さて、このコロナ禍で弱体、困窮化した労働者階級を特別に狙い撃ちにするのが金融業者である。本論稿ではまだ立ち入らないが、原則をまず述べると、個人情報不正取得・悪用、求人詐欺、高利貸し、金融犯罪、ネット犯罪や暴力団、金融機関、不動産・管理業者などの横断的な資本のネットワークが多くの香港の労働者とその家庭を系統的に餌食にしている。労働組合は今年提唱し出した新労働運動(新工運)で主張する土地や居住問題だけでなく、こうした増大する金融問題にも従来の労働問題の範疇を拡大せざるを得ない限界の局面になっている(彼らはそこまですぐ拡大しないだろうが)。ここで重要な価値観の転換は、雇用関係において、被雇用者が雇用主の違法行為を追求するように、金融犯罪の犠牲者の側も相手、債権者の違法行為を社会的に追求するという断固たる態度が必須である。労働問題の研究、従来の労働組合組織や専門家なる者も、資本の多領域、分野横断的な搾取と暴力の社会的な広域ネットワークに抗して、従来の狭い単なる労働法制の枠組みと著しく限定された事象分野、研究から実践においても多領域に発展しなければならない社会的な傾向が生じている。これは、長期的に今後の労働問題研究の方向性になるし、ならなければならない。ここで言う多領域とは、実践的な多くの行政、司法各部門の管轄をも跨いだ問題意識である。なぜなら、資本の側は異なる管轄間の間隙を狙い、暗躍するからである。
労働者の側が社会的に弱体化すればするほど、ますます反比例して強固な意思と、嵐の船の中でも乗組員が慌てふためくのに平然と餌を食べる豚の様な冷静さ、通徹した知識(何より敵の手口と社会的解決手段・条件を知る)と断固たる行動(手口や手段は労働者を餌食にする敵が実は一番熟知しているが、餌食となる被害者に自覚され行動されると相手は困る、つまり行動とは抵抗である)が必須になる。であるから、困難に比例して神経衰弱になったり、泣き寝入りしても1文の利益にもならない。敵の手口は被害者側の抵抗力や意思を削ぐことに注がれる。
もはや黙す能わず
強大な社会悪とは容赦無く無情に戦わなくてはならない。相手の違法行為が常に社会的弱者の、被害者の抵抗、拒否の理由になる。いくら広告で糊塗しても、他人を搾取する者が善や英雄であるということは永久にない。
とにかく、日本のであれ、香港のであれ、従来の労働組合は取り扱う範疇が資本の側に対して極端に狭過ぎ、今や他領域にまたがる労働者の面する社会問題・事件に十分な対応ができない旧態依然とした単一の閉鎖的な形態であるのを露呈している。既に、この停滞状況で多くの年月が過ぎているのだ。例えば、最も有力な商工会議所を見てもすぐに分かる様に、相手はトラストやコンツェルンの集合体でも、それに対する労働組合の側が何十年、何世紀も硬直した、特定企業内や特定業種だけの寄り合いという変化を忘れた組織形態では、明らかに釣り合わないのは一目瞭然である。これは、肯定的には、従来の労働組織と運動が未来においても発展進化する必要と余地がある事も意味している。そして、その必要性はここにおいて既に人間の意識に上っている。
本稿の執筆時点では、何ら制度面での変化は香港の労働法制の範疇において確認されえない。
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香港雇用条例 日本語翻訳注釈版
【原文】
Part V Payment of Wages (Format changes—E.R. 3 of 2017)
22. Wage period The wage period in respect of which wages are payable under a contract of employment shall, until the contrary is proved, be deemed to be 1 month.
【原文】
第V部 工資的支付 (格式變更——2017年第3號編輯修訂紀錄)
22. 工資期 根據僱傭合約須支付工資的工資期須當作為1個月,直至相反證明成立為止。
【日本語】
パートV
賃金の支払い
(フォーマット変更-2017年編集改訂記録No.3)
22. 賃金支払いの期間
雇用契約に基づいて賃金が支払われる賃金期間は、その反対が証明されるまで1ヶ月とみなされる。
注釈:他にそうでないという証明がなされない限り、労働者の賃金支払いの基本的な期間は1ヶ月ごとの支払いである。これは、日本も共通。
【原文】
23. Time of payment of wages
Wages shall become due on the expiry of the last day of the wage period and shall be paid as soon as is practicable but in any case not later than 7 days thereafter.
【原文】
23. 工資的支付日期
工資在工資期最後一天完結時即到期支付,須在切實可行範圍內盡快支付,但在任何情況下不得遲於工資期屆滿後7天支付。
【日本語】
23. 賃金の支払日
賃金は、賃金計算期間の最終日に支払期限が到来し、可能な限り速やかに、いかなる場合でも賃金期間の満了後7日以内に支払われなければならない。
注釈:ここで、賃金支払い日から7日以内に支払われなければ違法であり、賃金未払い請求権が発生する。
【原文】
24. Payment on completion
Wages of an employee on completion of his contract of employment and any other sum payable in respect of his contract shall be due to him on the day of the completion of the contract and shall be paid as soon as is practicable but in any case not later than 7 days thereafter.
【原文】
24. 僱傭合約完成時的工資支付
僱員在其僱傭合約完成時的工資及與該合約有關的任何其他須付款項,在該僱傭合約完成之日即到期支付,須在切實可行範圍內盡快支付,但在任何情況下不得遲於僱傭合約完成後7天支付。
【日本語】
24. 雇用契約終了時の賃金支払い
雇用契約終了時の従業員の賃金および当該契約に関連して支払うべきその他の金額は、当該雇用契約の終了時に、実行可能な限り速やかに、いかなる場合でも雇用契約の終了後7日以内に支払期限が到来するものとする。
注釈:短期や、プロジェクトベースの労働契約で、それが満了した日から7日以内に勝手な交換条件をつけることなく賃金は支払われなければならない。しかし、悪質なトンデモ企業は違法にも何かを交換条件にできると主観的に勘違いするが、未払い自体を合法化はできない。
【原文】
25. Payment on termination
(1) Subject to section 31O, where a contract of employment is terminated any sum due to the employee shall be paid to him as soon as is practicable and in any case not later than 7 days after the day of termination. (Amended 44 of 1971 s. 4; 67 of 1974 s. 4)
(2) The sum referred to in subsection (1) shall be— (a) the equivalent of the amount earned by the employee for work done over the period commencing on the expiry of his wage period next preceding the time of termination up to that time; (b) the sum (if any) payable under sections 7, 15(2) and 33(4BA); (Amended 57 of 1983 s. 4; 76 of 1985 s. 3; 103 of 1995 s. 7; 7 of 2001 s. 6) (ba) any long service payment due to the employee; and (Added 76 of 1985 s. 3. Amended L.N. 34 of 1990) (c) any other sum due to the employee in respect of his contract of employment.
(3) In addition to any deduction which may be made under section 32, and subject to any order made by a court, an employer may deduct from any sum payable under subsection (1) to an employee who terminates his employment otherwise than under section 6, 7 or 10 such sum as the employee would have been liable to pay if he had terminated his employment under section 7. (Replaced 44 of 1971 s. 4. Amended 14 of 1975 s. 3; 48 of 1984 s. 12)
【原文】
25. 僱傭合約終止時的工資支付
(1) 除第31O條另有規定外,凡僱傭合約終止,到期付給僱員的任何款項須在切實可行範圍內盡快支付,但在任何情況下不得遲於僱傭合約終止後7天支付。 (由1971年第44號第4條修訂;由1974年第67號第4條修訂)
(2) 第(1)款所指的款項為 —— (a) 相等於僱傭合約終止前對上一個工資期屆滿時起,至合約終止之日止,僱員工作所賺取的款額; (b) 根據第7、15(2)及33(4BA)條所須支付的款項(如有的話); (由1983年第57號第4條修訂;由1985年第76號第3條修訂;由1995年第103號第7條修訂;由2001年第7號第6條修訂) (ba) 到期付給僱員的任何長期服務金;及 (由1985年第76號第3條增補) (c) 與僱傭合約有關而到期付給僱員的任何其他款項。
(3) 除根據第32條可予扣除的款項外,以及在法庭作出的任何命令的規限下,僱主對於並非根據第6、7或10條終止僱傭的僱員,可從該僱員根據第(1)款獲付給的款項中,扣除該僱員假若根據第7條終止僱傭即有責任付給的款項。 (由1971年第44號第4條代替。由1975年第14號第3條修訂;由1984年第48號第12條修訂)
【日本語】
25. 雇用契約の終了に伴う賃金の支払い
(1) 第31O条に従い、雇用契約が終了した場合、従業員に支払われるべき金額は、可能な限り速やかに、いかなる場合も雇用契約の終了後7日以内に支払われなければならない。 (1971年第44号第4条改正、1974年第67号第4条改正)。)
(2) (1)項で言及された金額は、以下の通りとする。
(a)雇用契約の終了前に行われた仕事に対して、直前の賃金期間の満了から終了日までに従業員が得た金額に相当する金額。
(b)第7条、第15条(2)および第33条(4BA)に基づいて支払われるべき金額(もしあれば);(1983年第57号第4条、1985年第76号第3条、1995年第103号第7条、2001年第7号第6条を改正)
(ba) 従業員に支払われる長期勤続手当、および(1985年第76号第3条追加)
(c) 雇用契約に関連して従業員に支払われるその他の金額。
(使用者は、第32条に基づいて控除できる金額に加え、裁判所の命令に従って、第6条、第7条または第10条に基づいて雇用が終了していない被雇用者に関して、第1項に基づいて被雇用者に支払われる金額から、第7条に基づいて雇用が終了していれば被雇用者が支払う義務があったであろう金額を控除することができる。(1971年第44号第4条に置き換わり。 1975年第14号第3条改正、1984年第48号第12条改正)
注釈:この条項は、離職や解雇や満了などの契約終了の場合を意味している。ここでも、例えば解雇日から7日以内に法的に強制される支払い義務があるのは資本の側である。労働者側は、何もわざわざ自分で自分を縛る事になる何らかの文書での同意をする必要は一切ない。軽率に文書に同意して、そもそもなんの義務も法的にないのに、何からの法的な拘束力・責任を発生させる様な危険を犯す道理はない。
【原文】
25A. Interest on late payment of wages
(1) Subject to subsection (3), if any wages or any sum referred to in section 25(2)(a) are not paid within 7 days from the day on which they become due under sections 23, 24 and 25, the employer shall pay interest at the rate specified in subsection (2) on the outstanding amount of wages or sum from the date on which such wages or sum become due up to the date of actual payment.
(2) The rate of interest specified for the purpose of subsection (1) shall be the rate fixed by the Chief Justice by notice in the Gazette under section 50 of the District Court Ordinance (Cap. 336).
(3) No interest shall be payable in respect of any period before the commencement* of this section.
(Added 74 of 1997 s. 9)
Editorial Note: * Commencement date: 27 June 1997.
【原文】
25A. 因過期支付工資而須繳付的利息
(1) 除第(3)款另有規定外,如任何工資或第25(2)(a)條所提述的任何款項由其根據第23、24及25條變為到期支付當日起計的7天內仍未獲支付,則僱主須按第(2)款所指明的利率就尚未清付的工資款額或款項支付利息,利息自該等工資或款項變為到期支付的日期起計算,直至實際支付工資或款項的日期為止。
(2) 為第(1)款而指明的利率為終審法院首席法官根據《區域法院條例》(第336章)第50條以憲報公告釐定的利率。 (由1998年第25號第2條修訂)
(3) 不須就本條的生效日期*之前的任何期間支付利息。
(由1997年第74號第9條增補)
編輯附註: *生效日期:1997年6月27日。
【日本語】
25A. 賃金の支払延滞に対する利息の支払い
(1)
(3)項に従い、第25条(2)項(a)で言及されている賃金または金額が、第23条、第24条および第25条に基づいて支払期日となった日から7日間にわたり未払いのままである場合、使用者は、支払期日となった日から未払いの賃金の金額または利息金額に対し、(2)項で規定されている率の利息を賃金または金額が実際に支払われる日まで支払わなければならない。
(2)
(1)項の目的のために指定された利率は、地方裁判所条例(Cap.336)の第50条に基づく官報での通知によって首席裁判官が決定する利率とする。 (1998年第25号第2条改正)
(3)
本節の開始日*以前の期間については、利息を支払う必要はない。
(1997年の第74号第9条追加)
編集者の注意事項
*施行日:1997年6月27日
注釈:明らかに、日本の労働基準法よりも優れている規定である。未払い賃金に対して利息を要求する法的根拠が示されている。これは、疎かにされやすい香港の雇用条例の特徴の一つであり、労働者は必須の法的知識である。
【原文】
26. Manner and place of payment of wages
(1) Subject to this Ordinance, wages shall be paid on a working day directly to an employee in legal tender at his place of employment or at any office or other place customarily used by the employer for the purpose of payment of wages or at any other place mutually agreed.
(2) With the consent of an employee wages may be paid— (a) by cheque, money order or postal order; (b) into an account in his name with any bank within the meaning of section 2 of the Banking Ordinance (Cap. 155); or (Amended 49 of 1995 s. 53) (c) to his duly appointed agent.
【原文】
26. 支付工資的方式及地點
(1) 除本條例另有規定外,僱主須在工作日於僱員僱傭地點,或僱主習慣用作發薪的辦事處或其他地點,或在雙方議定的任何其他地點,用法定貨幣直接將工資付給僱員。
(2) 在僱員同意下,工資可按以下方式付給 —— (a) 用支票、匯票或郵政匯票付給; (b) 存入該僱員名下的銀行戶口,而該銀行是《銀行業條例》(第155章)第2條所指的銀行;或 (由1995年第49號第53條修訂) (c) 付給該僱員妥為指定的代理人。
【日本語】
26. 賃金の支払い方法および場所
(1) この条例に従い、賃金は、労働日に、使用者が従業員の勤務先、賃金支払いのために使用者が慣習的に使用している事務所などの場所、または当事者間で合意したその他の場所で、法定通貨で従業員に直接支払わなければならない。
(2) 従業員の同意を得て、賃金を以下の方法で支払うことができる。
(a)小切手、郵便為替、または郵便振替によるもの。
(b)銀行法(Cap.155)第2条に規定される銀行である、従業員名義の銀行口座への入金、または(1995年第49号第53条改正)
(c) 従業員の正当に任命された代理人に対して支払う。
注釈:法定の賃金の支払い方法に関しては、日本も香港も格別に差異はない。
【原文】
27. Payment not to be made in certain places
Wages, or any sum due to an employee in respect of his contract of employment on the completion or termination thereof, shall not be paid—
(a) in any place of amusement;
(b) in any place where cash-sweeps, fixed odds betting or pari-mutuel betting is organized or conducted with the permission or authorization under the Betting Duty Ordinance (Cap. 108); (Amended 17 of 2006 s. 23)
(c) in any place where intoxicating liquor or any dangerous drug is sold; or
(d) in any shop or store for the retail sale of merchandise,
except where the employee is employed in such place, shop or store.
【原文】
27. 不得在某些地點支付工資的規定
凡工資或任何在僱傭合約完成或終止時與該僱傭合約有關而到期付給僱員的款項,不得在以下地點付給 ——
(a) 任何娛樂場所;
(b) 根據《博彩稅條例》(第108章)獲准許或批准舉辦或進行的現金彩票活動、固定賠率投注或彩池投注的任何舉辦或進行地點; (由2006年第17號第23條修訂)
(c) 任何售賣令人醺醉的酒類或危險藥物的地點;或
(d)
任何零售商品的店舖,
但如該僱員受僱在此等地點或店舖工作,則不在此限。
【日本語】
27. 特定の場所では賃金を支払わないという規定
雇用契約の完了または終了時に、雇用契約に関連して従業員に支払われる賃金またはその他の金額が支払われる場合、それらは以下の場所で行われてはならない。
(a)あらゆるエンターテイメントの場。
(b) 現金賭博、固定オッズ賭博、またはパリミュチュエル賭博が、賭博税条例(Cap.108)に基づいて行われることが許可または承認されている場所(2006年第17号第23条を改正)。
(c)酒類または危険薬物を販売する場所。
(d) 商品を小売で販売する店舗
ただし、従業員がそのような場所や店舗で雇用されている場合を除く。
注釈:日本には見られない特殊な条項だが、これは労働者の大敵たる暴力団が幅を利かす社会環境で労働者を犯罪被害、権益損失から守る予防的な観点である。
【原文】
28. Remuneration other than wages
(1) A contract of employment may provide for giving to an employee food, accommodation or other allowances or privileges in addition to wages as remuneration for his services.
(2) No employer shall give to an employee any intoxicating liquor, dangerous drug, or any ticket or other substitute for ticket for any cash-sweep, fixed odds betting or pari-mutuel betting organized or conducted with the permission or authorization under the Betting Duty Ordinance (Cap. 108) as remuneration for his services. (Amended 17 of 2006 s. 23)
【原文】
28. 工資以外的報酬
(1) 僱傭合約可規定僱員除工資外,並可獲得食物、居所或其他津貼或優惠,作為其服務的報酬。
(2) 僱主不得以任何令人醺醉的酒類、危險藥物或根據《博彩稅條例》(第108章)獲准許或批准舉辦或進行的現金彩票活動、固定賠率投注或彩池投注的任何彩票或其他彩票代替物,作為僱員服務的報酬。 (由2006年第17號第23條修訂)
【日本語】
28. 給料以外の報酬
(1) 雇用契約では、従業員がそのサービスの報酬として、賃金に加えて、食事、宿泊、その他の手当や譲歩を受けることができると規定することができる。
(2) 雇用主は、従業員に提供したサービスの報酬として、酒類、危険薬物、または現金、固定オッズ賭け、パリミュチュエル賭けで行われることが賭博税条例(Cap. 108)で認められている、または許可されているくじ、その他のくじの代用物を提供してはならない。 (2006年第17号第23条改正)
注釈:ここでは、賃金支払い方法及びその時点において、賃金を損いかねない状況に労働者が置かれることを防止する点が重要である。労働者はここまで弱い立場にあるのだ。
【原文】
29. Prohibition of agreements as to manner of spending
No employer shall in any contract of employment or agreement in consideration of a contract of employment make any provision as to the place at which, the manner in which, or the person with whom, wages paid to an employee are to be expended.
【原文】
29. 禁止就使用工資方式訂立協議
僱主不得在任何僱傭合約或以僱傭合約為代價的協議內,訂定有關僱員在何處、以何種方式或與何人使用其獲付給的工資的任何條文。
【日本語】
29. 給与の利用方法に関する合意の禁止
使用者は、雇用契約または雇用契約の対価としての契約において、被雇用者が自分に支払われた賃金をどこで、どのような方法で、または誰と使用するかについて規定してはならない。
注釈:これは、日本では聞き慣れない類の条項のようで、実は運用において極めて大切な条項である。しかも、日本では賃金の利用方法を、例えば就業時のユニフォームや靴などの指定物の購入やクリーニングなどの指定されたサービスの定期的な利用という形で賃金の支払い方法を労働前後において巧みに規定しているので、これは雇用条例的に違法である。また香港で、この条項が今あるのは天から降ったわけではなく、過去にこの様な手口が甚だしく社会的に累積した結果である。
支払われた賃金の利用方法の規定は、実は実際の取り分の賃金自体の減額やそれ自体金額詐欺である上に、賃金の支払い方法自体すらも間接的に規定することでもある。つまり、この賃金の支払い方法とは、このように会社が指定するように利用する事を規定したものとして支払うと言う意味である。狡猾極まりない手口である。
【原文】
30. Provision of shops, etc. by employers for sale of commodities to employees
An employer may establish shops, stores or places for the sale of commodities to his employees, but no employer shall bind any employee by contract, agreement or other obligation, written or oral, express or implied, to make use of any such shop, store or place for the purchase of commodities.
【原文】
30. 僱主開設商店等將商品售賣給僱員的情況
僱主可開設店鋪或場所,將商品售賣給僱員,惟不得以合約、協議或其他義務形式 (不論是書面或口頭、明訂或隱含的),限定僱員在該等店鋪或場所購買商品。
【日本語】
30. 使用者が店舗等で従業員に商品を販売する行為
雇用主は、被雇用者への物品販売のために店舗または施設を開設することができる。ただし、書面または口頭、明示または黙示を問わず、被雇用者が当該店舗または施設で物品を購入することを限定するような契約、合意、その他の義務を負わせてはならない。
注釈:これは、日本では大手大企業でも平然と行われている行為であり、業務上必要という体裁で、つまり業務命令や就業規則として特定の賃金使用方法を強制する行為である。香港は、この点日本より優れておりこの様な多重な労働者への搾取を禁止している。
つまり広義にはそこで買い物をし、他の会社店舗で買わない事を意味するのが実質であるが、社内的に買える人や物を制限すると言う意味も包含されると解釈できる余地がある。
【原文】
31. Employer not to enter into contract of employment without reasonable belief that he can pay wages
(1) No person shall enter into, renew or continue a contract of employment as an employer unless he believes upon reasonable grounds that he will be able to pay all wages due under the contract of employment as they become due.
(2) An employer shall, if he ceases to believe upon reasonable grounds that he will be able to pay all the wages due by him under a contract of employment as they become due, forthwith take all necessary steps to terminate the contract in accordance with its terms.
(Added 71 of 1970 s. 3)
【原文】
31. 僱主在無合理理由自信可付給工資的情況下不得訂立僱傭合約
(1) 任何人,除非有合理理由自信會有能力在到期支付時付給所有根據僱傭合約須到期支付的工資,否則不得以僱主身分訂立、續訂或繼續任何僱傭合約。
(2) 僱主如不再有合理理由自信會有能力在到期支付時付給所有根據僱傭合約須到期支付的工資,須隨即採取一切必需步驟,按照僱傭合約的條款終止合約。
(由1970年第71號第3條增補)
【日本語】
31. 雇用主は、賃金支払い能力を合理的に確信できない場合には、雇用契約を締結してはならない
(1)何人も、雇用契約に基づいて支払われるべきすべての賃金を、支払うべき時に支払うことができるという合理的な確信がない限り、雇用主として雇用契約を締結、更新、または継続してはならない。
(2)雇用契約に基づいて支払われるべきすべての賃金を、期限が到来したときに支払う能力があると合理的に確信できなくなった使用者は、直ちに雇用契約の条件に従って契約を終了させるために必要なあらゆる措置を講じなければならない。
(1970年第71号第3条追加)
注釈:至極合理的な条項であるが、運用においては整理解雇が水面下で行われている閉鎖が予定される部門でも、その最後の時まで補充要員を正社員で募集するという無責任な手口が香港で活動する大手有名大企業でも散見される。この様な行為は明らかにこの31条違反である。
NOTES
https://www.censtatd.gov.hk, (Aug. 31, 2021) 'Labour Force, Employment and Unemployment'. Available at: https://www.censtatd.gov.hk/tc/scode200.html
https://www.censtatd.gov.hk, (April 22, 2021) 'Population Estimates'. Available at: https://www.censtatd.gov.hk/en/scode150.html
https://www.censtatd.gov.hk, (Aug. 18, 2021) 'Table 6 : Labour Force, Unemployment and Underemployment'. Available at: https://www.censtatd.gov.hk/en/web_table.html?id=6
https://hk.on.cc/hk, (Aug. 30, 2021) '多個界別有工冇人做 團體促改善再培訓「以工代賑」'. Available at: https://hk.on.cc/hk/bkn/cnt/news/20210830/bkn-20210830140216593-0830_00822_001.html
References
1.Cap. 57 Employment Ordinance, version of January 1, 2021. https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap57
2.第57章 《僱傭條例》version of January 1, 2021. https://www.elegislation.gov.hk/hk/cap57!en-zh-Hant-HK
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